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仏壇の前で踵を立て正座をする研次は、膝を掴む手に力が入る。真っ直ぐ伸ばした肘に預けるように、俯く頭は震えていた。
「あの日、約束したじゃないか。桜の木の下で会おうって。1月に届いた手紙だって、楽しみにしてるって書いてたじゃないか」
5年間、一体誰と文通をしていたのか。届いた手紙は、恵美の字であったことに間違いない。
「研次くんが出発した日の夜にね、あの子にこれを託されたの」
恵美の母は、仏壇の遺影の後ろへ手を伸ばし、手紙を取り出した。
「5年後に、あなたが来たら渡して欲しいって。自分で渡したらって言ったんだけど、『お母さんからじゃないと意味が無いの!』って言って半ば強引に渡されたのよ。その時は、死ぬなんて思ってもみなかったから」
手紙を受け取った研次は、封を開け中身を取り出した。和紙で出来た紙に桜がデザインされた、恵美らしい手紙だった。
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