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今度は岐阜県まで来た。1977年に、夏の白川郷を見に行ったと書いてあった。
入場料を払い、敷地内へ入る。古風な建物には絵に描いたような藁葺屋根が目に飛び込んできた。
水車の上から、雨どいを伝って流れ落ちるまだ冷たいであろう山水が、年季の入った水車を回していた。
彰が、唐突に訊いてきた。
「なんで、合掌造りっていうんだろうな」
「なんでだろう──そういえば、フランスにいた時に、イギリス人に訊かれたことがあったな。ホワッツ、ガッショウヅクリ? て」
「なんて答えた?」
「分かんねぇ。って答えて、後で必死に調べてみた。結局良く分からなかったけど、あの三角の屋根の作りを合唱構造っていって、建築用語らしい」
「ふぅん」
ここでも有力な手掛かりは得られなかった。
その足で、愛知県にある犬山城へ行った。次の年に訪れた場所だ。
恵美の手紙には「立派な口髭を生やした兵隊さんの顔みたい」と、書いてあった。
確かに正面から見ると、天守閣にある二つの窓が目。そのすぐ下にあるタープのような小さな屋根が口髭。その下の大きな窓が口。に、見えなくもない。
「お前の彼女が言うように、どう見ても顔だな」
「あぁ、顔だ」
(こんな面白い発見は、恵美と一緒に共有したかった。これに気付いた時の恵美は、きっと大はしゃぎするだろうな)
研次はそんなことを想い耽けた。
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