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 次の年に、恵美は名古屋を観光していた。大須観音や、テレビ塔、名古屋市科学館へ行った。その日は駅裏のホテルに泊まったとあった。名古屋グランドホテル。これは昨年の出来事だけに、研次と彰はかなり期待をした。 「ご予約のお客様ですか?」 「あ、いえ。お伺いしたいことがありまして」 「はい、なんでございましょう?」 「去年の夏頃ですが、蒼鳥恵美という女性が泊まりに来ているはずなんですが、覚えていないでしょうか?」 「蒼鳥恵美さまですか。う~ん。お泊りになられた方のお名前は、殆ど記憶しているのですが、そのようなお名前の方はいらっしゃらなかったような気がしますが……」 「名簿にありませんか? それを見たら思い出すかもしれませんよ」  研次は食い下がった。受付の女性は、念のため帳簿を開き名前を探してくれた。ところが。 「蒼鳥恵美さまという方は、宿泊されていませんね」 「え?」  研次は、反射的に訊き返した。思わず顔を上げた彰も「そんな馬鹿な」と零す。 「もっと良く探してください。泊っているはずですから」 「そう言われましても……」
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