空と海がひっくり返った話

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海飛行士 海に飛び調査する、海の調査隊 空と海がひっくり返る前は宇宙飛行士といったそうだ 今日もクジラは空を泳ぐ ☆ だいがく、大学… 進路、夢…未来 やりたいこと、やってみたいこと、興味、関心… 海、飛ぶ、飛行士 「あー、ないない」 部屋で1人、ひとりごと 進路調査表に書いた文字をくしゃくしゃっと消しゴムで消す どうしよう… いつも海は眺めているだけだった 成績は悪くない私 まぁ、授業態度はいつも三角だけれど それでも、こんな性格だからか、将来の夢なんて考えたことも無く… 将来…将来……… ほんとうに、どうしよう…… ☆ クジラが鳴いている 「ホェェェェェェェェェ……」 今日も雨 傘にぽたぽた 土日挟んでの月曜日登校 私の気持ちも雨 憂鬱極まりない日だ 「おはよ」 後ろから声が聞こえた 振り返ると、昨日の男子 「…おはよ」 私は小さく応える 「進路きまった?」 「月曜の朝から、そんな憂鬱な話しないでよ」 「いや、俺は決まったから」 「えっ」 それは、この土日で、行きたい大学を見つけたということ? でも、彼は将来の夢は決まっているのだから当然と言えば当然か… 「お前も行こーよ」 彼が唐突に言う 「え?」 「海飛びたいだろ?」 「それは…」 正直、飛びたい… でも、あと一歩 その1歩のなにかが足りないような気がするのだ 雨の音 ぽたぽた、傘から水滴が垂れる その一瞬、水滴が浮いたように見えた "ぽちゃんっ" 目を見開く 一瞬、その一瞬 水滴は浮いた、ようにみえた あの海のように 私の中の海のように 「おい、聞いてるのか?」 「はっ!」 彼の声で我に返る 「どうした?」 「あ、ううん。行こう、授業遅れちゃうよ」 「お、おう」 彼と校門を走る 校門に広がる無数の傘 色とりどりの傘 花みたいに開く 私はふと、空を見上げる クジラが私を見下ろしていた ☆ 先生の声が淡々と教室に響く テキスト、ノート、シャーペン、消しゴム と、ノートの下の進路調査票 朝見えた水滴 その中に見えた小さな私 反対になった私 今の私は、あの水滴なんだ 窓の外 クジラがバシャンと尾鰭をあげ、身を返す 大きな水飛沫、降る雨、降る私 私のなりたいものは、そんなんじゃない 私がなりたいものは……… 私はシャーペンを走らせた
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