第1幕    永遠の彼

9/17
前へ
/44ページ
次へ
「拓海?カレー出来たよ。」 声をかけると、拓海は一瞬ハッとしたようだった。 「あ、あぁ、ははっごめん、食い入るように視ちゃったよ。」 「ふふっ、食べよ」 顔つきは、いつもの彼に戻っていた。 手を合わせ、いただきます、と声をかけると、拓海は一口目でスプーンいっぱいに口に含んだ。 とても幸せそうな顔をして。 「うまい!最高!」 そう言うと、次から次へどんどんカレーを口に入れ、あっという間に平らげてしまった。 「おかわり欲しい!」 「分かった(笑)」 席を立ち、カレーをよそいに行く。 そして、ふとさっきのニュースを口にした。 「銀行…、貯めてたお金持っていかれるなんて許せないよね。せっかく2人で頑張ってきたのに…。そんな行動に出るなんて信じられない」 「…うん。」 拓海の言葉は、その一言だけだった。 その後は、いつもならベッドで愛を確かめ合う行為が行われるところだが、その夜は何もなく次の日の朝を迎えることとなった。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加