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ーーーー知ってる?この話……。
最近の若者は、どうやら怖い話が好きなようだ。
暑い中スーツを纏った男は、軽くネクタイを緩めながら噂話に花を咲かせる4人組の女子高生を横目に見ている。
夏真っ盛り、暑さを吹き飛ばす為には怪談話、それは昔からの定石。
最近は心霊番組など減ってきたかのように感じていたが、どうやら話を披露する媒体が変わっただけのようで、盛り上がる女子高生もまたその話を見つけたのは今主流のスマートフォンだった。
木陰で涼みながら眺めるスマホに、女子高生たちは釘付けになる。
「0時、〇〇ビルの入り口で空を見上げたらーーーー」
肝心な部分が、車のクラクションでかき消された。
そこからいくら耳を澄まそうが、街の喧騒はそれを許してはくれなかった。
大きく息を吐き、目の前に伸びる横断歩道を見つめる。
信号は赤のまま、女子高生との距離も変わらないまま。
だけど、それ以上情報が耳に入る事は無かった。
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