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帰宅と香水
しばらく笑い合ってた私達。
「帰るね」と私は巽君に言って立ち上がる。
「わかった。」
巽君は、そう言って笑ってくれた。
「また、明日も来てくれる?」
そう言われて頷いた。
「よかった。」
「明日も、歌詞書こうね」
「うん、書こう。」
巽君が、私に握手をしようと手を差し出した。
握手をした。
「これからも、よろしく。」
「うん。」
「あっ、芹沢龍に一回会わしてあげるよ。」
「えっ?ほんと?」
「うん。あんたが、東京にこれるようになったら」
「嬉しい。」
「約束」
「約束」
そう言って、手を離した。
「あんた本当に、芹沢龍好きだよな。」
「うん。好き」
「何でって聞いていい?」
「うん、いいよ」
「何で?」
「妊活してて、夫に頑張ってないって言われて。心がパリんって割れた音がした。涙が止まらなくなって、何しても無理だったんだけど…。芹沢龍君の歌ってる動画見たら、スーっておさまって。何度も何度も聞いたら心の欠片が繋がって。気づいたら涙も、止まってた。」
「すごいな、それ。jewelも誰かのそんな存在になれてるかな?」
「なれてるよ。私だけじゃないと思うよ。こんな風に思う人。」
「そうかな、ありがとう。でも、歌って本来そうだよな。誰かの傷や痛みを癒したりするんだよな。どれが、ハマるかなんて聞く方もわからないよな。じゃあ、芹沢龍に会ったら歌ってもらいたいんだな。」
「そうかも知れないけど…。今度とれた舞台も歌ってるはずだよ。」
「舞台ってさ、この日?」
「うん、それそれ。二階席だけどとれたの。」
「もし、俺がこの日行けたら会わしてあげるよ。終わってから」
「いいよ。そんな」
「何で?早く会えるんだよ?」
「だって、何の曲も出来てないから」
「頑固だね。」
「だって、最初の約束でしょ?守りたいよ。約束」
「まだまだ日にちあるから、一曲作れたら会わせるよ。」
そう言って笑ってくれた。
「ありがとう。」
「一曲できたら、約束」
「約束」
そう言って指切りをした。
「じゃあ、私帰るよ。」
「下まで送ろうか」
「ううん、ここでいいよ。」
「気をつけてね。」
「うん。ありがとう」
「また、帰ったら連絡して」
「わかった。」
そう言って私は、巽君の部屋からでた。
エレベーター乗るのちょっと怖い。
エレベーターに乗って、手につけた香水を嗅いだ。
大丈夫、いけそう。
無事に一階まで降りれた。
依存しすぎなのかな?
私は、人に…。
結婚してすぐに引っ越して、勇作がすぐに出張に行って孤独だったんだと思う。
それと誰も知らない人達ばかりで不安だった気持ちと…。
小さい頃に、両親が働いていて鍵っ子だった私の埋まらない寂しさもあったのかもしれない。
すべての孤独がミックスされて、結局一人でいれない存在になってしまった。
一度壊れたものは、元に戻らないのはわかってる。
この体とも、この症状とも、付き合って生きていくしかない。
昔は、足からの偏頭痛と後頭部頭痛と目眩が酷かった。
片手いっぱいの薬飲んでた。
引っ越してすぐ、目眩以外なくなった事はすごく感謝してる。
治ったわけじゃなくて、台風の日や気圧が変化する時とかには時々でてくるけど…。
目眩の方は、しばらく続いて終わった。
こちらも、時々出てくる。
今あるのは、不安感と動悸。
これもいずれ、落ち着くかな?
時々ぐらいの存在にならないかな?
タクシー乗り場に向かうとタクシーがいた。
家の場所を告げた。
タクシーに乗ると不安感がやってきた。
私は、紙袋を覗く。
さっきの香水と巽君が使ってた香水が混ざりあってる。
混ざりあった香りも悪くない。
なんか、抱きしめられたあの時に似ていて不安感は消えた。
無事に家についた。お金を払って降りた。
香水のお陰で私いれそうだ。
時刻は、8時を回っていた。
この時間から、家にいると不安感がやってくるけど…。
もしかしたら、今日からは大丈夫かもしれない。
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