気づいてないね【巽】

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気づいてないね【巽】

ついたって連絡が、きた。 俺は、しばらくスマホを眺めていた。 佐浜さんとの写真を見てる。 すごく、楽しかったな。 ちゃんと帰れてよかった。 安心した。 次、会う時は動画でもとっておこうかな 俺の動画も撮って送ってあげようかな 佐浜さん、喜ぶかな 佐浜さんって、旦那さんの名字だよな。考えたら 六花さんの方が、いいのかな? ってか、俺。 あんたってしか呼んでないかー。 なんて呼ぶべきかな? 今さら、六花さんとか変だしな 佐浜さんって呼ぶのもなー。 俺は、頭をかいた。 わかんないな。 何か、今話したい気持ちになって電話した。 佐浜さんは、出たけど寝起きっぽいな。 不安感がでそうだったけど、マシになったみたいでよかった。 俺は、起きてるよって言った。 佐浜さんの不安を取り除いてあげたい。 たくさん話を聞くと言った。 佐浜さんは、きっと気づいていない。 俺は、佐浜さんと一緒に話して気づいていた。 佐浜さんの心は、うまく愛を受け取れなくて、愛を受け取っても貯めておく事が出来ないんだと思う。 きっと、旦那さんも気づいていないと思う。 佐浜さんが、求める愛の形を見つけ与える事は難しいと感じる。   きっと、幼少期に埋まるはずだったのではないだろうか? 人の言葉を素直に受け取る事もやめたのだと思う。 うーん。 どうやったらいいのか? 佐浜さんが話を聞いて欲しいのは母親だ。 母親…母親…。 俺は、久しぶりに母さんに電話する。 「もしもし」 「巽、元気してるの?」 「うん。」 「ご飯食べてる?」 「うん。」 「色々あると思うけど、気にしないで過ごしてね」 「うん、ありがとう。」 「巽が、TVにでるのもjewelのliveも楽しみにしてるからね」 「うん。ありがとう」 「じゃあね。」 「じゃあ」 そう言って電話を切った。 よくわからないけど、母親ってみんな一緒なのかな? 俺に出来るかわからないけど…。 たくさん話を聞こう。 佐浜さんの不安感の原因は、それなのではないか? 「もしもし」 「もしもし。」 「大丈夫?」 「今は、ちょっと無理かも」 夜の22時を回った頃、佐浜さんからかかってきた。 「近くまで行こうか?」 「ううん、電話でいい。」 落ち着かせるように、深呼吸をしてる。 「わかった。」 「何か話してくれる?くだらない事でいいから」 「そうだな?何を話そう。俺があんたに出会った日の事を話そうか」 「うん。」 「あの日、あの場所でいろんな人を見てた。あんたが、現れた時、俺の目はあんたに釘付けになった。なぜかは、わからなかった。ただ、あんたと話したいって思ったから。あんたの特徴を見ていた。そしたら、あんたからこっちに来てくれてスゴイ嬉しかった。」 「うん。」 「それで、あんたに話しかけた。次の日来てくれるかどうかは賭けだったけど…。無理なら無理で、また探そうって決めてたから」 「どうやって?」 「わかんないけど。とにかくjewelのlive会場や、俳優してるからそれの試写会とか…。どうにか探すつもりだった。どうしても、あんたに関わりたくて」 「そうだったんだね。」 さっきより声が落ち着いてる。 「落ち着いた?」 「なんか、巽君の声聞くと落ち着いてきた。」 「ありがとう。俺、あんたと関わってよかったよ。あんたは、素直に俺の事を誉めてくれる。俺さ、やっぱりこんな仕事だから評価きにするのよ。あっそとか思っててもしんどい時も正直あってさ。あんたみたいにストレートに話されたら、気持ちが楽になる。」 「ありがとう。そう言われて嬉しい。」 「さっきより、マシになったね。」 「うん、落ち着いてきた。」 「その不安感ずっと付き合っていくの大変だな。」 「時々ね。逃げたくなる時がある。」 「そんな時は、これからは俺にかけてきてよ。絶対電話に出れるって約束は出来ないけど。必ず連絡するようにするから…。」 「ありがとう。大丈夫だよ。何とか付き合ってきてるから」 「それでも、連絡してほしい。」 「うん、わかった。」 その後も俺は、佐浜さんと話した。 俺の出てた映画の話、ドラマの話、jewelの話。 気づいたら、12時を回っていた。 「もう少し話す?」 「うん。」 そう聞いて、俺はまた話す。 佐浜さんの不安を消してあげたい。
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