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やっぱりさ、俺【巽】
佐浜さんの話を聞く。
聞いてるうちに泣いてた。
お酒飲んだからかな?
佐浜さんが、旦那さんを思う気持ちはわかってるよ。
でも、欠けた心の一ヶ所を繋げる存在になれてるならよかった。
不安感が減るのならよかった。
「あのさ、あんたにとって俺が必要ならいいんじゃない?」
「うん。」
「会ってた時も話したけど、俺達の想いに答えを見つける必要ないと思うんだよ。見つけるって事をしたら、一緒にいれないって感情もでてくるだろ?俺も、あんたに拒絶されたから、会った時急に触れたくなったり、その先もって変な事も考えたよ。でも、あんたが今みたいに受け入れてくれてたらそんな感情は全然わかないんだよ。」
「うん。」
「だから、この感情を否定するのはよくないって思ったんだ。あんたは、どう思う?」
「そう思うよ。否定したらするだけ、求めてしまうから…。」
「うん。俺とあんたの心が求め合ったから今があるんだろ?男や女って枠に囚われたら、余計な想いに囚われて、俺達進むべき道を見失うんじゃないかな?」
「うん。気づいたら、男女の仲にもなるって事だよね。」
「そうだと思う。だからこそ、二人でこんな風にはもう会えないって思ってる。だって、会うとあんたが旦那さんに悪いって思うだろう?その気持ちにあんたが、囚われてしまったら?そしたら、俺達進む道間違えていくよ。」
「うん、そうだよね。考えれば考えるだけ、巽君を求めるよね。」
「本当はさ。あんたと一緒に居たら楽しくて幸せで、俺はやっぱりあんたが好きだ。だから、こんな風に二人で過ごせる日があればどんなに嬉しい事だろうって思う。でもさ、それであんたが旦那さんに疑われたらいけないと思うから…。だから、俺の一緒にいたいって感情なんかあんたは気にしなくていいんだよ。あんたは、あんたの今の幸せを大切にしなくちゃいけないんだよ。」
「私も、巽君といるの楽しい、幸せ。巽君の事、大好きだよ。でも、夫の事も大切にしたい。」
「それで、いいんだよ。だからさ、後2日だけは俺と過ごしてよ。あんたのスマホ、SDはいるよな?」
「うん、はいるよ。」
「じゃあ、新しく買ってSDに保存しよう。」
「写真って事?」
「写真も動画も撮ろう。こうやって二人で会えるの最後かもしれないから…。」
「そっか、記念に置いとくって事?」
「うん。SDもいつかは壊れるだろけど。パソコンに保存したりしとくから」
「うん。」
「一人で不安感に押し潰されそうになったら、それ見て拭えないかなって思って。」
「うん、動画は嬉しいよ。巽君の声、落ち着くから…。」
「うん。だから、2日間でいっぱい撮ろう。いろんな動画や写真をさ。」
「うん、撮りたい。」
佐浜さんの不安感は、最初の電話からずいぶんと消えていた。
「起きたら、連絡してよ。」
「うん、そっち行くから連絡する。」
気づいたら、もう2時を回っていた。
「まだ、不安?」
「ううん。もうほとんどなくなってる。」
「眠れそう?」
「もう少ししたら、寝てみる。」
「目覚めて不安感きたら連絡してよ。俺、寝てても電話で起きる自信あるから。」
「ありがとう。」
「あんたには、俺がいる。旦那さんもいる。だから、一人じゃないよ。」
佐浜さんの不安を拭うには、多分真っ直ぐストレートに愛を届けないといけないと思ってる。
「ありがとう。」
「孤独に囚われてしまわないで欲しいから」
「さっき言った感情の話だよね。囚われると進むべき道を見失うって話。」
「そう。俺もさ、色々あったからわかるんだけど…。どんな感情でも囚われてしまうのはよくないって思うんだよ。切り替えるのは、大変な事だしうまく出来ない事だと思うよ。それでもさ、囚われてしまうのだけはやめなきゃいけないよ。」
「それは、誰の言葉も届かなくなるから?」
「うん。」
「巽君には、私の不安感の原因がわかってるの?」
「多分、これかなって思うものはあるよ。」
「そうなんだね。」
「話す方がいい?」
「ううん、巽君が思う通りにやって。」
「うん。」
「眠れそうな気がしてきた。」
「寝てみる?」
「うん、おやすみ。」
「おやすみ。」
「不安感でたら、いつでも電話してよ」
「わかってるよ。じゃあね」
「うん、じゃあ」
そう言って電話が切れた。
俺も、ちょっと寝るかな。
怪我みたいに簡単に治せない。
だから、大変なんだよな。
俺が役にたてるかわからないけど
出来るだけの事をやって、佐浜さんが一人でもいれるようにしてあげたい。
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