芹沢龍

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芹沢龍

朝起きて、用意をする。 待ちに待った芹沢龍君の舞台を見に行ける。 あの日、頑張って歌詞は、仕上げた。 今日、巽君が曲を作ってくれるのか? どうなのか? 来てくれるのかも、わからずにいた。 夕方からの芹沢龍の公演、緊張して不安感が襲ってきたけど、無事に最後まで見る事が出来た。 感動しすぎて、最後に泣いた。泣いた。 芹沢龍と、同じ空間にいれただけで、よかった。 ありがとう。 公演が終わり、スマホの電源をいれた。 [終わったら、きて。] そう言って場所が、書かれてる。 巽君は、ちゃんと約束を守って来てくれた。 どうやら、staff入り口の方に行かないといけないみたいだけど。 場所わかんないな。 [最後に出るね。] そう言ってメッセージを送った。 みんながいなくなっていく。 出ようかな。 立ち上がって、ゆっくり出ていく。 はぁー。人すごい。 今日は、しんどかった。 でも匂いとこれが私にはあった。 一ヶ月前に突然送られてきたバングル。 「いた。」 その声に顔をあげた。 「えっ?」 「場所わかんないんじゃないかと思って」 見渡したら、一人になってたみたいだ。 「気づいてたんだ。」 「方向音痴だっただろ?出会った日から」 「ハハハ。そうだね。」 「足、大丈夫?」 「うん。大丈夫だよ。」 「旦那さんは、外?」 「たぶん、どっかにいるよ。」 「じゃあ、行こうか」 「うん。」 そう言って巽君は、私と並んで歩く。 あんなに居た人は、もうまばらだった。 「こっち」 そう言って連れてこられた。 すごい、芹沢龍に会うんだ。 コンコンってノックしたら、中から声がしてマネージャーさんが出てきた。 「会えますか?」 巽君が、帽子を取った。 「あぁ、どうぞ。」 そう言ってマネージャーさんは、外に出た。 「お疲れさま。」 「あぁ、巽。ありがとう」 そう言って巽君がいうと芹沢龍は喜んでいた。 「誰?」 「あぁ、この人。俺のバンドの作詞手伝ってもらってて、龍のファンだから連れてきた。」 「そうなんだ。ありがとうございます。」 「こちらこそ、ありがとうございます。」 何だろう、ドキドキと嬉しさで涙が出てきた。 「そんな嬉しかった?」 巽君に聞かれて、頷いた。 「握手しましょうか?」 「いえ、大丈夫です。」 「何で、してもらいなよ。」 ちょっと考えてから、荷物を置いて握手をしてもらった。 その時に、何かが聞こえた気がした。 「大丈夫ですか?」 とっさに聞いてしまった。 「えっ?何で?」 「あっ、すみません。」 そう言って手をはなしたら。 巽君が、「俺、外出るよ。」って行ってしまった。 「何か、すみません」って頭を下げて私も出た。 あっ、杖忘れた。どうしよう。 巽君、追いかけなきゃ。 「待ってよ。」 そう言うと止まってくれた。 「あんたさ、誰にでも優しいんだな?」 「違うよ。」 「さっき、大丈夫?って聞いてただろ?それは、なに?」 「何かわかんないけど、芹沢さんからしんどいって聞こえた気がしたの。昔よく好きな人や仲がよかった人の気持ちや痛みがダイレクトに心にはいってきて泣いたりした事があったんだけど。それと同じ事がさっきおきた。多分、巽君と詞をするようになって感覚が戻ってきたのかも。さっき、芹沢さんと握手したら何か流れてきたから大丈夫って聞いてた。」 「そうなの。なんだ、俺てっきりあんたが俺に感じた感情と同じ事を龍に思ったのかと思ったから。」 「ううん。思ってないよ。ヤキモチやいたの?」 「はっ?そんなわけないよ。杖どうした?」 「忘れた、さっきの場所に…。」 「取りに行くついでに、聞いてみよう。」 「体が疲れたんだよ。舞台だったし」 「それで、苦しくならないでしょ?あんたは」 そう言って戻っていく。 戻ってくると、マネージャーさんが立っていて。 また、いれてくれた。 「ごめん。杖忘れたみたいで」巽君がはいった。 「いや、大丈夫。」 「はい、これ。」 「ありがとう。」 「あのさ、龍って何かしんどいの?」 私は、巽君の腕を掴む。 「直球すぎない?」 そう言った私に 「大丈夫だよ」って言って、また話す。
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