悩み

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「変な事言ってごめん。」 「何で、わかったの?」 芹沢さんが言った。 「俺じゃなくて、この人が言ってきたから」 そう言って、私の肩を叩いた。 「なんで、わかったんですか?」 芹沢さんが私に言う。 「なんとなくです。」 そう言ったら、 「初めてだよ。自分の気持ち気づかれたの」って笑った。 「この人、佐浜六花さんっていうんだけどさ。意外に気持ちに気づいてくれるの。龍、悩んでるんだな」 「うん。やっぱり誰かに話したら、広まりそうでさ。言えなくて…。」 「俺とこの人でよかったら聞くよ。」 「今言えるのは、なんかしんどいってだけ。」 「そっか。無理すんなよ。」 「ありがとう。」 「あっ、そうだ。佐浜さんがさ、龍を好きになった話聞かせてあげてよ。」 そう言って巽君が笑って言う。 「恥ずかしいよ。」 「恥ずかしくても、話してよ。」 そう言われて、深呼吸して話す。 巽君に話したままを話して 「ドラマや映画やテレビで、芹沢さんを見るだけで幸せです。応援してます。」 そう言ったら、芹沢さんが泣いてしまった。 どうしよう。 そう思ってたら、巽君が 「嬉しいよな。そう言われたら」って言った。 「うん、そうだね。俺の存在にそんなに救われてる人がいるって嬉しいよ。」 と言って涙を拭ってる。 「私だけじゃないと思いますよ。」 「でもさ、俺達ってそう言うのあんまり聞く事ないでしょ。直接。snsとかでも、かっこいいーとか癒されるとかあっても。あんたみたいな具体的なのってあんまりないから。」 「そうだね。」 芹沢さんは、笑った。 「俺でよかったら話聞くよ。今度飲まない?」 「うん。舞台終わったら」 「うん。じゃあ、帰るわ」 「うん。帰ろう」 「佐浜さん。」 「はい。」 「これ」 そう言ってサインをくれた。 「写真、撮ります?」 「いいんですか?」 「はい。」 「俺が撮ってやるよ。」そう言って巽君が写真を撮ってくれた。 「ありがとうございます。」 「巽との写真とってもらえます?」 「はい。」 そう言って私が写真を撮った。 「載せるならちゃんとしなきゃ、瞳の中まで見られるよ」って巽君が笑った。 「そうだね。」 そう言って二人が笑ってる。 芹沢さんの痛みが少しだけ和らいでる気がする。 「じゃあ、帰ろっか」 「うん。」 「あの、佐浜さんも巽と飲むとき参加してよ。」 「えっと…」 「あんたは、リモートだな。TV電話」 「あっ。はい、是非」 「それで、じゃあ。」 「はい。ありがとうございます。」 「じゃあな。」  そう言って頭を下げた。 マネージャーさんが、巽君と私に頭を下げてくれた。 巽君と私も、頭を下げた。 「入り口まで送るよ。」 「ありがとう。」 「あっ!これ杖」 「ありがとう。」 「あのさ、あんたさ、すごいな。」 「えっと、何が?」 「さっきの、俺だったら気づいてないよ。ちょっと元気ないなってぐらいでさ。あんた、すごいな。」 「すごくないよー。」 「照れてるだろ?」 「照れてないよー。」 そう言った私の腕を巽君が掴んだ。 「それ、つけてくれてるんだな」 「うん、気に入ってる。」 「よかった。似合ってる。」 「あっ、それ。」 「お揃いだよ。」 「知らなかった。」 「言うつもりなかったから」 「なんか、繋がってるみたいだね。」 「うん。そうだな」 そう言って巽君は、照れてる。 「ねー。さっきヤキモチやいたよね?」 「やいてねーよ。」 「俺に似た感情とか言ってなかった?」 「言ってねーよ。」 「そう?なら、いいや。」 「あのさ、また会えてよかったよ。」 「うん、私も…。今日、巽君のお陰で不安感あっても最後までいれたよ。ありがとう」 「よかった。」 「じゃあ、帰るね。」 「うん。俺も帰るから」 「気をつけてね。」 「そっちも、気をつけて」 私は、巽君に手をふった。 「帰ったら、メールして」 「うん、わかった。じゃあね」 「じゃあ。」 私は、振り返って歩く。 なんか、今日はすごく幸せだった。 芹沢龍に握手してもらえた。 嬉しすぎる。 巽君と久々に会えたのも嬉しかった。 あっ!写真とればよかった。 まだ、いるかな? 私は、巽君に電話をかけた。
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