9人が本棚に入れています
本棚に追加
嬉しかった
車に乗り込み流れる景色を見つめながら、一人喜びが隠せなかった。
「りーちゃん、嬉しそうだね。」
「うん、芹沢龍の舞台を最後まで見れたんだよ。それだけで、幸せだよ。」
「不安感なく最後までいれてよかったよ」
「うん、よかった。」
本当は、それだけじゃないんだけどね。
気づくと眠っていた。
「ついたよ」
「ありがとう」
私は、車から降りた。
家に入るとムギ姫が、お迎えしてくれていた。
「ムギ姫、今日お母さんちゃんと舞台最後まで見れたんだって」
[にゃー]
「そうだな。よかったな」
[にゃー]
勇作は、ムギ姫を撫でている。
勇作は、ムギ姫を置いて、シャワーに入りにいった。
ブー、ブー
[ついた?]
[はい、巽君は?]
[まだ、新幹線]
[ついたら、連絡下さい]
[はーい]
メッセージは、終わった。
戻ってきた勇作は、水を飲んで話しかけてきた。
「じゃあ、俺はビール飲んだら寝るよ」
「うん、わかった」
何でかな…。
不思議と勇作に、申し訳ないって気持ちはわかないんだよね。
巽君に出会ったお陰で、私はやっと不安感から解放された。
ずっと、解き放たれなかったから…。
お茶をいれて、隣に座った。
「また、sns見てるの?」
「うん、ごめん。」
「芹沢龍の?」
「ううん、友達の」
「それ、見たら嫌な思いするでしょ?」
「うん、そうだね。」
「あんまり、見ない方がいいよ」
そう言って、勇作はビールを飲み干した。
もうすぐ、友達は子供が産まれる。彼女のsnsは子供で溢れるだろうね。
また、こうやって縛りつけられる自分が嫌いだ。
「さあ、寝るよ。りーちゃんも早めに寝なよ」
「わかった。」
勇作は、ギューと抱き締めてくれた。
「おやすみ」
「おやすみ」
私は、勇作が寝に行ったのを見てから、お風呂を沸かしに行く。
昔は、勇作が起きている時間にしかお風呂に入れなかった。
今は、眠った後でもお風呂に入れるようになった。
それだけでも、私は少しだけ成長した。
[お風呂が沸きました♪]
バングルを置いて、お風呂に向かう。
「ムギ姫、お風呂に行ってくるよ」
[にゃー]
「よしよし、ゆっくりしてね」
[にゃー]
そう言って、お風呂に入る。
巽君のお陰で、一人でもいれた。
これから、もっと変われる気がする。
お風呂に入りながら、今日の舞台を思い出す。
芹沢龍と話せた。
嬉しすぎる。
でも、それよりも巽君がわざわざ会いに来てくれた事が嬉しかった。
巽君に会えた事が、嬉しかった。
後で、写真送っとこう。
お風呂につかりながらも、ニヤニヤが止まらなかった。
お風呂からあがって、化粧水をつける。
今日は、疲れたけど楽しかった。
お水を飲みながらスマホを見つめる。
ブー、ブー
[ついた]
[よかった。ゆっくり休んでね]
[ちょっと話せる?]
[大丈夫だよ]
巽君から、電話がかかってきた。
「もしもし」
「今日、頑張れたんだな」
「うん、ありがとう。巽君のおかげだよ。バングルもらったから」
「つけててくれて、嬉しかったよ」
巽君の声は、安心する。
「旦那さんと帰ってるのみた。あんな顔するんだなー。でも、ヤキモチは妬いてないから」
「アハハ、何それ?」
「だけど、龍には妬いた。何か、あんたを取られたくなかった。」
「嬉しい事言ってくれるね。嘘でも、嬉しいよ」
「嘘は、つかないよ。あんたが、幸せになれる方法ないか考えてる。ずっと…」
「ありがとう」
「また、sns見てるだろ?」
「何で?」
「旦那さんが寝てるから、電話にでたんだろ?じゃあ、見てるよなって思って」
「もうすぐ、友達が出産だから…。多分、そればっかりになるんだろうなって。嫌いじゃないのに、振り回されて馬鹿みたいだよね」
「本当に、赤ちゃん欲しいんだな」
「巽君だって、雑誌で語ってたよね。」
「龍は、結婚興味ないって。俺は、したいよ。でも、考えた事なかったな。あんたみたいに傷つく人がいるの…。俺は、仕事がら聞かれて答えてるけど…。まだ、結婚にはほど遠いよ。まだ、相手いないし。でも、結婚したら欲しいよな。赤ちゃん。でも、それが絶対になったら辛いよな」
私は、泣いてしまってた。
「諦めても、諦めても、追いかけてくる。それが、たまらなく嫌なの。」
「そうだよな。」
巽君は、そう言ってからjewelの歌を口ずさみ始めた。
「君が泣いている世界が♪」
その歌声に泣いてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!