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理解される痛み
「大丈夫だから♪いつか、その傷を笑える日がくるから♪」
私は、泣いていた。
「巽君、ありがとう。」
「あんたの世界をもっと広い場所に俺が連れて行ってやるから」
「うん」
「今は、痛くて悲しくても、いつか絶対笑えるから!」
「うん」
「その声に、振り回されなくなる日がくるから」
「うん」
「だから、今はたくさん泣きなよ」
「ありがとう」
「俺が、あんたの傷を拭える歌をたくさん歌ってやるから!」
「ありがとう、巽君」
「会える日があれば、傍にいるから」
「うん」
「毎日、俺とのこの時間思い出して!悲しい事よりも、楽しい事をたくさんしよう。」
「うん」
俺は、佐浜さんにそう言った。
多分、これは恋にも満たない不思議な気持ち
ただ、佐浜さんの傷を拭ってあげたい。
泣き止むなら、ずっとずっと傍にいて歌ってあげたい。
不安な気持ちが、消えるなら…
ずっと、ずっと、大丈夫だよって背中を擦っていてあげたい。
「巽君、私ね。子供やっぱり欲しかったよ。諦めたくなかったよ。でもね…。」
「体も心も、無理だったんだろ?ゆっくり休みなよ。そしたら、年取っちゃうから悲しい?だったらさ、jewelのマネージャーにしてやるよ!」
「何言ってんの?」
「俺が、あんたを色んな場所に連れてってやるっていっただろ?年取っちゃったら、俺があんたの傍にいてやるからさ!俺、あんたに幸せになってほしいんだよ」
「そんな事したら、巽君が結婚とか子供とか諦める事になるよ」
「そんなのいらないよ!俺には、ファンがいる。俺には、たくさんの作品もある。それが、全部俺の子供だから…。だから、あんたが年取ったら俺が引き受けてやるから!今は、ゆっくり休めよ。あんたの、苦しみも悲しみも痛みも全部まるごと俺が引き受けてやるから…。だから、今を生きろよ」
「巽君、また会いたいよ!楽しかったよ!あの時間。何も考えなくてよかった。私は私だった。お母さんになれない欠陥品な私じゃなかった。普通の人でいれた。だから、また会いたい」
「うん、会おう。俺、休みがまたあったら行くよ!あんたに会いに行く。あんたも、不倫とか言われないように歌詞作れよ!そしたら、堂々と俺達会えるだろ?俺は、あんたをjewelのライブに連れ回せるだろ?」
佐浜さんが、泣いてるのがわかる。
これ以上、傷つかないで欲しい。
SNSに載ってる出来事に、友人の妊娠報告に、これ以上振り回されないで欲しい。
「諦めようと思ったし、諦めてるって思ったのに…。やっぱり、私。弱いよね」
「そんなわけないよ!弱くなんかないよ。嫌な感情もってるって自分を責めるなよ!少なくとも俺は、あんたが優しい人間だってわかってるよ」
「巽君」
「あんたの人生を俺が絶対かえてやるから!ほら、一人で不安でおかしくなりそうになったら絶対連絡いれてくれよ。俺、出来るだけ連絡するから!見たら、すぐに連絡するから」
「巽君の人生振り回してるね」
「振り回してないよ!俺がしたいんだよ。あんたを救いだしたいんだよ。その沼のような場所から…。ちょっとは、俺。役に立ってる?」
「たってるよ!巽君のお陰で不安感が消えるんだよ。不思議だよね!今まで、何しても消えなかったのに…。何でだろう?」
「不安感消えるなら、よかったよ。俺、あんたの役にたててよかったよ。」
何でかは、しってる。
佐浜さんと出会って、俺自身も救われていた。
苛立ちや苦しみや痛み、そんな複雑な感情が、佐浜さんと過ごして少なからず減ったんだ。
俺も、何者でもなくいられた。
俳優でも、歌手でもなく、ただの人間でいれた。
佐浜さんと同じだった。
「巽君、ありがとう!何か、少し落ち着いた。」
「よかった」
「まだ、時間大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「じゃあ、まだ話してていい?」
「うん、いいよ」
そう言って、佐浜さんは俺にゆっくりと話し出した。
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