転生

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転生

目を覚ますとそこは知らない所だった。 僕は今真っ白な部屋にいる。 見える限りには何もないただの白い箱。 一体僕は何分、何時間ここにいるのだろう。 別に1人は慣れてる。 ずっと1人で過ごしてきたし。 ただ、そう言って(命令して)くれれば。 でもここが何処なのか、そもそもここにいてもいいのかすら分からない状態が続くと流石に困る。居て駄目な場所なら怒られてしまう。 誰だろう、僕をここに呼んだのは。 「あぁやっぱり!ほら、早くおいでセレーネ!君の愛し子、待ちぼうけてるよ!」 「あらぁ?まぁ本当!静かすぎて気づかなかったわ」 問いかけに応えるかのように何もない空間から声が聞こえてくる。 ふと目を向けると眩い光と共に見知らぬ男女が現れた。 そう、何もない場所から。 「………夢を見てるのかな」 そうだ、これは夢だ。 とうとう幻覚まで見るようになってしまったか。 僕の想像の中にしては目の前の2人は美しい。僕、美的感覚はあったんだなぁ……… 「あらあらまぁまぁ!この子夢かなんかだと思い込んでるわぁ」 「そりゃあそうだよセレーネ。この子は僕も君のことすら知らないだろうよ。それに多分自分が死んだってことも気づいてないね」 「はぁ……?」 男の方がふわりと浮かびながら僕に近づいてきて頬をつんつんと触ってくる。 どうやら彼らによると僕は死んでしまったらしい。 「まぁ、驚かないのね私の可愛い愛し子。」 「別に…とうとう死んだかってくらい……それよりもあなた達が誰なのかとその愛し子、っていう方が気になります。」 女の言葉にそう返すと2人が驚いたように目を丸くする。 どうしたのだろう、何か気に障ったのだろうか。 疑問を口に出さない方が良かったのかもしれない。 「………すみません、答えられなければ…」 「いいえ!もちろん質問に答えますよ私の可愛い子。私は母なる女神、セレーネ。あなたは私の愛し子……神に愛された子。」 「セレーネ……母なる女神……何らかの宗教でしょうか?」 「違うよ、僕達は君の住んでいた地球を司る神じゃない。別の世界の神なんだ!ちなみに僕はオルファ!僕達が司っている世界の創造の神だよ」 「別の世界………」 「えぇ、あなたは元々私の愛し子、地球とは別の世界の住人なの。だから地球でのあなたの扱いに不具合が起きたのね……可哀想な私の子。さぁあなたは地球で死んだことだし元の世界に帰りましょう」 「僕達はね、君に申し訳ないことをしたと思っているんだよ!君が予定通りこっちの世界に来ていたら地球でこんなに疎まれることはなかった、あぁあぁ可哀想な子だよ。僕達は地球に干渉出来ないからこうやって君が死ぬのを待つしかなかったんだ!」 恐らく神々である2人が言うには僕が地球で疎まれる………虐待や虐めにあっていたのはその不具合というのが原因らしい。 そして僕を元の世界に返そうとしているみたい。 「でももう大丈夫だよ!さぁ行こう!!」 「……お断り、します。」 「……何故?君は向こうの世界の住人、向こうで幸せに暮らすんだよ?」 「新しい人生なんて要りません。僕、疲れたんです。もう休ませてください。」 新しい人生、もう一度やり直す気力ははっきり言って、ない。 僕は死んだというのなら休ませてほしい。 ここしばらくはもう痛みや苦しみなどの感情を感じなくなったものの疲れていない訳ではないのだ。 「あらあら、私の愛し子は向こうで幸せに暮らせるか心配なのね?大丈夫よ、その可愛らしい顔のまま転生させてあげましょう。そしてあなたがもう誰にも侮られないよう、愛されるように私の祝福を授けましょうね」 「うんうんそれがいい!じゃあ僕の加護も授けてあげよう!これで君は無敵だよ、二大神の加護と祝福を持っているから!」 「いや、だから……」 「そろそろ送ってあげないとね。」 「えぇ、この世界とはいえ私達も中々干渉出来ないから。あなたが頑張って生きて頂戴ね」 彼らが現れた時と同じ光が僕の体を包む。 「私の愛しい子……本郷 凛。いえ、これからはそう……ノエル、…ノエル・フィンレー。これから生きていく貴方の名前よ。ノエル…あぁ私の愛し子……」 途切れそうな意識の中、呟いた言葉は誰かに届く事無く宙に消えた。
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