転生

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「ヴァラレアに……こんな立派な屋敷が……」 「…?入らないんですか?」 「あ、あぁ…」 屋敷に入ってからも2人は忙しなく首をキョロキョロさせている 何だろう、この世界から見て珍しいものでもあったんだろうか。その辺りの常識は未だ持ち合わせていないから分からないけどそっちに気を取られている間に部屋に戻ってしまおう 一応彼に2人の手当てとお世話をお願いしておく。この世界で一般的なおもてなしをすること、聞かれたことや頼まれたことは僕に不都合がない限り応えてあげて欲しいということを告げ、1人で部屋へと戻る もう見慣れてしまった天蓋付きのフカフカのベッドに横たわり目を瞑る。 引きこもりの体に外出は流石に堪えたようですぐに深い眠りについた。 コンコン 誰かが扉をノックする音で目が覚める この家でノックするものなんてあの執事くらいしかいない 珍しいな、今まで一度も起こされたことなんて無かったんだけど 入ってくる様子がないので、どうぞ、と声を掛けると彼が一礼してようやく入ってきた 何の用だろう、と寝起きの頭でぼーっと見ていると彼はいつもの無表情で淡々と用件を伝えてくれる 「お客様方が貴方様と共にお食事をしたいと仰っておりますが如何しましょう。」 あぁそうだった、外に出て迷ってた時に人に会って…連れ帰ったんだっけ。 すっかり忘れてしまっていた。 一緒に食事をしたい、とはまた謎だ。勝手に食堂でも何でも使ってくれて構わないのに。 まぁもしかしたら一緒に食事をする、というのがこの世界のマナーなのかもしれない。 断った方が面倒そうだ、ただ食事をするだけなら別に拒む理由もない ただ、そういった対人関係のマナーやしきたりは学んでいないから何をすればいいかは分からない。 どうすればいいか、と執事に聞いたところとりあえず服を着替えるようにと言われた なるほど、この服じゃ不味いのか。服はこの世界に来た時からクローゼットに山ほどあるけどどれがどれだか分からない。複雑なものも多いし…。 一通り見てみて1番シンプルで着やすそうな服を選んだ。 シンプルだが凝ったデザインの白いシャツに薄い紫色のベスト、あと初めて見た、ループタイってやつ。真ん中には深い深い海の色のような青の石が埋め込まれている。 高そうだな、と思いつつもセットで置いておかれていたし付けろってことだろう。 シャツとベスト、ズボンは自分で着てループタイは執事に付けてもらった やり方分からないし壊したら困るし タイを締めてもらう時に、あと少し軽く用意していくからお客さんの所に行くようにと伝える。 あとの準備は僕1人でも出来るし。 彼は無言で一礼すると部屋を出ていった 順番が逆だろうけど洗面所へ向かい顔を洗う 寝起きのぼーっとした頭が少し冴えてすっきりした気がする これ以上待たせるのも良くないだろうし、そろそろ僕も行こうか 長い長い廊下を1人で進む いつもは厨房で食事を作っても自分の部屋やその場で食べるから食堂を使うのは初めてだ あと、僕が用意していないのに呼ばれたってことは食事は彼が作ってくれたんだろう 久しぶりに誰かが作ったのを食べる、それこそここに来たばかりの頃以来だ そんなことを考えているうちに食堂に着いた 中に居るんだろうけど…勝手に入っていいものだろうか ……いや、別に今のところ僕がこの屋敷の主人だしいいか 少し重めの扉をキィ、と開くとやはり中に2人のお客さんと執事がいた。 だけど何か執事に詰め寄っている、何かやらかしたんだろうか 「君…!主人をおいて来るとは何事だい!?この大きい屋敷に使用人が君1人というのもおかしな話だが……今誰も彼に付いている者が居ないということだろう!?」 どうやら彼が僕に付いていないのがお客さんにとってはおかしいらしい 別に1人で出来るからいいんだけど 扉を閉める音でお客さんも僕に気づいたみたいでお客さんの1人がこちらに歩いてくる 「申し訳ない!まさかこの屋敷に使用人が彼だけとは……主人である君を差し置いて彼をこちらに付けさせてしまい本当に済まなかった。」 「いえ、別に。僕のことは気にしなくていいですよ」 「でも君の世話は誰が…」 「元々ここ数年は自分のことは自分でやってるんで別に…あ、お腹が空いたんですよね。今日のメニューは何か知りませんけど多分美味しいですよ。執事さんが作ってくれたんですよね?」 「はい、僭越ながら」 「じゃあ食べましょうか。……あ、僕どこに座らなきゃいけないとかあるんですか?」 「えぇ、こちらの席に」 執事に促されて席に着く 1番奥の1つだけ扉の方を向いている席、そこが僕が座る場所らしい 席に着き、ふと前を見るとお客さん達がぽかんとした顔で突っ立っている 「?……あぁ、お好きな席へどうぞ?すみません、食堂使うの初めてなんでマナーとか何も分からないんです。」 「一体……君は……」 「お客様方、どうぞお席にお着きくださいませ。ただいま料理を運んで参りますので。」 執事の声にハッとした様子で2人も席に着く 何やら言いたげな様子だがやはりお腹が空いていたのか、大人しく料理が来るのを待っていた
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