2 革命広場と断頭台

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2 革命広場と断頭台

革命広場に着く頃には、数えきれないほどの群衆が押し寄せ、地面が見えないほどだった。 男も女も老人や子供まで、手に持った何かを振り上げて興奮している。 口々に叫んでいる声はただの喧噪となり、言葉として聞き取ることはできない。 そのことに少しだけほっとして、私は自分の意識の中に沈み込むことにした。 そして愛する家族や愛しい人々を想い、口の中で彼らに別れを告げた。 「マリー・テレーズ、ルイ・シャルル、エリザベート、そして…フェルゼン。さようなら。どうかどうか私と陛下の分も生きて…幸せになって」 誰ともきちんとお別れが出来なかった。今日へと日付が変わった深夜を過ぎても裁判は続き、死刑判決が出されたのは午前4時を過ぎていたから。 独房に戻されてから書いた最期の手紙は、義妹のエリザベートにあてたものだった。 この革命の始まりと共に、王族や貴族のほとんどが海外へ逃亡・亡命していく中で、エリザベートは最後まで私たち家族と一緒にいてくれたのだ。 そして今も私の娘、マリー・テレーズを世話し、励ましてくれている。彼女の献身には感謝してもしきれない。陛下の妹であり、王族のひとりとして、彼女も命の保証はないかもしれない。それでもどうか助かってほしいと祈らずにはいられなかった。 輝かしいフランスのブルボン王朝、その歴史を華やかに彩った王族たち。陛下やその兄弟・姉妹たちは、生まれた時期が悪かっただけで、本当ならこんな苦しみを味わう必要のなかった人たちだ。 特に陛下は、歴代の国王がしたような贅沢や、公娼を持つことに興味がなく、国民のため、王家のために使命を全うされた立派な方なのに。
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