2 革命広場と断頭台

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私と陛下は国同士が決めた政略結婚だったけれど、陛下のことは心から尊敬していたし、愛情を感じてもいた。陛下もまた、最期の時まで子供たちと私を愛し、大切にしてくださった。 「誰のことも憎むな。恨むな。決して復讐などは考えてはいけないよ」 王太子であるルイ・シャルルにそう言い聞かせ「私は私の死を作り出したものを許す」と言って断頭台に立った立派な国王だ。 陛下がお亡くなりになった時、私はルイ・シャルルの前に跪き「国王ルイ17世陛下」と言って手を取った。 悲しみの中でルイ・シャルルの即位を受け入れ、私の命をかけて守り抜こうと誓ったのだ。 それなのに。 私はあの子を守ることができなかった。幽閉されていたタンプル塔であの子だけ引き離され、私の手の届かない場所へ連れていかれてしまった。 「ルイ17世だと?悪いがこいつは平民になるんだよ。王族のことなんて忘れて、平民として生きたほうがこれからは幸せだ」 そんなことを言い放って、嫌がるあの子を無理やり連れて行ったのは下品な平民の男だった。その日から一度も会えないまま、私はこの世に別れを告げなくてはならないのだ。 考えても考えても、どうしてこんなことになってしまったのか、一体何がいけなかったのか。私にはわからなかったし、信じられなかった。 本当にフランスにはもう王家が必要ないというの? たった7歳の私の息子は、平民として生きた方が幸せなの? 私が生まれて生きてきた世界、大切な人たちもみんな消えてしまうの? その時。 「…ばんざい!」 「共和国ばんざい!」 はっきりとした民衆の叫び声が突然聞こえてきて、私は我に返った。 「共和国ばんざい」と叫ぶ人々の顔を見ても、知っている顔はひとつもなかった。 これがフランス国民だというの? 彼らが望む未来とは、どんなものなの? ここにはこんなに人がいるのに、私の会いたい人は誰もいない。 最期の瞬間までも私は孤独だった。
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