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「えー、生前の犯罪歴は……『一部を除いて』結構なレベルでやらかしており、それが原因で被害者家族と関係者たちによる報復を受けて死亡、で間違いないね?」
「正確にはめっためたにリンチされたけどな。」
「……ふう。事情確認はこれで終了です。」
ソイツは腕を組みなおし、「おれ」に向かって厳しく冷たい声で語りかけてきた。
「キヅチ・トオル。自分の運命を選べなかった人生だったとはいえ、君の行いは余りに酷い。」
「わかってるよ、おれの人生はクソ犯罪者のそれだし地獄行きなのは確定なんだろ?」
「そうだ。しかし……。」
ソイツは一息つくと、とんでもないことをのたまいやがった。
「今、地獄は急増する犯罪者の処罰で行列待ちです。なので……」
「へ?」
「君には魂の更生と罪科の清算のために異世界転生してもらいます。」
「ちょ、ちょっと待て!?」
「質問ですか?」
「なんでおれが転生しなくちゃいけねーんだよ!?」
「なぜなら、疫病禍から発した現世の事象があまりに不安定さを増し、そのせいで犯罪が急増してあの世に受け入れる魂が急増してしまったからです」
「だからって何で異世界転生が罪の清算につながるんだよ!?」
「絶望の末に犯罪に走った魂の穢れが急激に肥大化した結果、罪の背負う魂を受け入れるの地獄の浄化作用があなた方のような魂を一切受け付けなくなり、君らの魂は現在進行形で悪霊化しつつあるからです。
もちろん、この場で悪霊化したら、君を強制浄化する予定ではありますが。」
「まじかよ!?」
「おれ」は愕然とした。
確かに、「おれ」は生きる事に絶望して犯罪に走り、この手を無意味な事で汚しながらもひたすら楽になれる日を待ち望んでいた。
その『楽になりたい』という願望が、死んだ後の「おれ」を追い詰める結果になったのか?
……ふざけるな!
「おれ」は地獄に行くことすら出来ずに無意味に消えるしかないのか!!
「まあ、君のことだから、無意味な生の後に地獄で裁かれる事で楽になろうとしたんだろうけど、それは他の死者たちも同様でね、真相を知った途端に暴走して自業自得な消滅を迎えた死者もいたよ。」
「くっ……。」
思わず膝の上に置いた拳を握りしめた「おれ」に、ソイツは言葉を続ける。
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