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「そんなわけで、このままでは本来裁かれるはずの魂たちに行く先を告げられないってことで、急遽、異世界転生の行いによって罪を測ろうって事になった訳。」
「もちろん、このまま消えるなんて許さねえんだろう?」
「うん、そうされたら死後の裁きの公平なシステムが無意味になっちゃうしね。」
「死後の裁きが異世界転生な時点でおかしくない?」
「幸い君を受け入れてくれる場所があるから、そこで魂を鍛えなおしてくると良い。ちゃんとサポートはつけてあげるからね。」
「おれ」の言葉をスルーしたソイツは明るい口調で「おれ」を励ますようにして言祝ぎの言葉を紡いだ。
「君はこれから長い旅を行う、良き仲間に恵まれ、君は無意味ではなく意味のある人生を送るだろう。」
空間が急激に金色の光を増していく。
あまりのまぶしさに思わず目をつぶる「おれ」の脳裏に、親が子に対して優しく慈しむような声が囁かれた。
「安心して行っておいで、我が娘、キヅチ・トオル。全てが終わったらまたここで会おう。」
※※※
生前、暇つぶしに立ち寄った本屋の新刊コーナーの一角に並べられていた、転生モノを扱っているラノベを一冊手に取ったことがある。
もちろん、『ありがたくいただいた』けどな。
タイトルは忘れたが、中身はこれは酷いモンだった。
反吐の出るようなおめでたい頭をした、いわゆる善性に満ちたヤツが異世界に転生して「俺様最強!」ってばかりに好き勝手暴れる話だったからだ。
しかも、主人公は男女問わずのハーレムを抱える程の人たらしで、まさにご都合主義の塊といえるようなナニカ……いや、化け物だった。
この話を読んでからしばらくの間は得体の知れない怖気に襲われ、気づいたら全身中が蕁麻疹で覆われていた。
痒みに体中をひっきりなしに搔いていた「おれ」を見た組織の仲間連中は腹を抱えて笑っていたけど。
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