神様に呼ばれた大罪人たち

5/7
前へ
/8ページ
次へ
 それに答えるように孤児院の古ぼけた扉が開いたときは「救い神キタ!!」とばかりに喜んだものの、おれを一瞥した途端に舌打ちした年増のシスターを目にした途端、おれの今生はクソまみれなものになりそうだと絶望した。  舌打ちシスターこと、シスター・アザレアは嫌々ながらおれを地球でいうところの12歳にあたる年齢まで育ててくれたが、其の後は必要最低限の教育や礼儀作法を叩き込んだ後は、食い扶持を稼がせるべく様々な所へと奉公に出した。  といっても、丁稚奉公のようにそこに住み込みにするのではなく、稼がせた金を孤児院へ落とさせるための稼ぎ手として働き口を斡旋していたのである。  今回の働き口は「酒場」の裏で芋向きをはじめとする料理の下ごしらえや皿洗いの手伝いである。  おれはそこで孤児院での日々の生活で培った素晴らしい芋向きの芸術を披露していた。  ペティナイフで綺麗に芋の皮を薄く、しかも長く剥いていく技は、食べ盛りのやんちゃ坊主(女子も含む)が食べられる分を少しでも増やすために身に着けたものである。  素早く、そして白い肌を晒した大きな芋を下処理もかねて新鮮な水で満たされた盥に次々と放り込んでいく。  最初はぶつくさ文句たれてはシスター・アザレアに拳骨をもらっていたものの、黙々と芋の皮むきに打ち込んでいく作業は余計な事を考えずに済むし、なによりやんちゃ坊主どもが目をキラキラさせながらささやかながらも温かいご飯にありつける様子を見ているのは、胸のあたりがぽかぽかしていて気持ちが良かった。  で、芋の皮むきを終えた後、客が食べ終えた皿を下げようと店内の様子が伺えるカウンターに近寄ったら、冒頭のゴロツキ連中が酒場の看板娘を勤める女給にちょっかいを出していた。  ゴロツキ連中は街の嫌われ者で、何処かの街から流れてきた勇者候補崩れだそうだ。  トリコローディ王国とは別の国の王様が出したお触れに従い、勇者候補になるべく旅に出たそうだが、見事にその候補の座から転げ落ちた。  どうしてかは分からなかったが、「何かに認められなかったせいで勇者になれなかった」とか「他の連中の卑怯な企みのせいで陥れられた」とかほざいてたが、おれの目線からしてみれば、日中から酒場に居座っては過去の栄光とやらに縋りついているみじめなゴロツキ連中でしかなかった。  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加