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告白
ばあちゃんと約束はした。
もちろん覚えている。
ただ、いつするかなんて決めてない。
と言うひどい言い訳と共に、時間はどんどん過ぎていった。
あれだけ通ったばあちゃん家に行くこともなく、冬が過ぎて春が来ようかと言う頃に父さんから「取り壊しが終わったよ」と一言だけ伝えられた。
告白できていないことでバツが悪い気もしたけれど、勇気がもらえるような気がして久しぶりに向けた足。本当にばあちゃん家があったところには何も無くなっていて、ただただ更地が広がっていた。
立ち入り禁止のロープをくぐり、ばあちゃんとアイスを食べた縁側のあった場所になんとなく進む。
「あれ」
しゃがみ込んで拾った木の棒には『当たり』と書かれていた。
「はは、天国には持っていけなかったんだ」
持っておくと言っていたのに。なんとなく裏返すと、おそらく油性ペンで書かれたであろう文字がそこにあった。
『意気地なし用のゲン担ぎ』
ばあちゃんにはなんでもお見通しだ。
一つため息をついて、俺はもう一度あの山に向かった。
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