あの秋・雨の日の思い出

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 私がまだ、小学六年生だった時のことだ‥‥。  その日、僕は朝のテレビで 『きょうは午後から雨になります』  と言ってたのに、 「大丈夫だよー。走って帰るから」  なーんて言って、登校した。  すると、予報どおり午後には本降りになった。  僕は、困ったな‥‥と思いながら、傘立てを見ると、満杯の傘の中に、日頃から好意を寄せているミカの赤い傘もあった。  手で持つあたりの名札入れに『××ミカ』とあったから、すぐに分かった。  僕は、ちょっとイタズラして、そのミカの赤い傘を泥棒すると、ミカの名札を外してゲタ箱の陰に隠した。  やがて下校どきになり、傘立ての前に行ったミカは泣き出した。
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