243人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
「……きみだよ」遠田は。わたしから、目を逸らさない。「亜土という苗字をネタにしていることから、須和島さんが話しているのは、きみだということが分かった。それで。……きみに、会いたくなった。
須和島さん」目を向けた彼は、頭を下げ、「おかしなことに巻き込んで申し訳ない。それから、須和島さんの、彼氏さんにも、ご迷惑を、おかけしました」
「いや、おれは全然……」続いて、遠田と、わたしに、目を向けた彼は、「おれたちのことは平気なんで。せっかくなんで、ふたりで……話して来たらどうですか? この近くに、いい公園があるんで」
* * *
……で。こうなると。
「そんなむくれんなよ。茅羽。……騙したことはおれが悪かった。ごめん」
「違う」花見町の有名な公園の、アヒルさんのボートに遠田と並んで乗るわたしは、足漕ぎをしながら、「違うの。そうじゃない。怒っているんじゃなくって……自分に腹が立っているの。
遠田のことをあんなに傷つけたくせに。……遠田に抱かれた自分が。そんで。避け続ける自分が」
「平方はおまえの気持ちを分かっているんじゃないかな。親友……なんだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!