◇06. 向き合う時

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 ええ、まぁ。確かに。本当に……本気で、あの愛の行為で、すっかり、わたしは、骨抜きですよ。あんなにも、誠実に、女を愛す男だとは知らなかった。 「……遠田。ごめん。もう、……許されてすむことではないけど。  今更に聞こえるかもしれないけどわたし。いまの、アップデートされた遠田も、昔の、まっすぐで純朴な遠田も、……大好きだよ」 「こら」わたしの頬に手を添える遠田は、自分の方へと顔を向けさせ、「ふたりきりのときは、新って呼べよ……茅羽」  そうして貪るようなキスを与えられたのちに知る。この公園の池のボートでプロポーズした男女は永遠に結ばれるという。そんな伝説を知らず、わたしは、息が止まるような接吻ののちに、そっと薬指に――指輪をはめられていた。 「愛している茅羽。ずっと……一緒にいよう」  *
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