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まず2階の鍵が落ちてきた側の部屋、203号室に向かいインターホンを押したが返事はなかった。次に3階、303号室のインターホンを押したがまた反応がない。午前10時過ぎという時間は一般的には会社や学校に行っている時間だろうから留守が多いのも仕方ないが、鍵を落とした人がどこかにいるはずだ。
このアパートにエレベーターはなく、階段からしか階を移動できない。3階に来るまでに誰ともすれ違ってはいないのでおそらくまだいるはずだなのだが・・・。
もしかしたらと思い302号室のインターホンを押したがまた誰も出てこない。郵便受けを見るとチラシが無造作にたくさん詰まっているのでこの部屋は空き部屋なのかもしれない。
――困ったな。このまま鍵を持っていくわけにも行かないし、大家さんか管理人でもいれば渡してさっさと出勤したいのだが管理人室のような部屋はない。まさか303号室のドアに引っ掛けて置いていくわけにもいかない。勝手に303号室のドアを開けてしまうか?開けて中に置いていけばいい。いやいや、だめだ、空き巣と変らない。だがせめて303号室の鍵なのかどうかだけでも確認したい・・・。
出勤時間が迫る中、考える時間も惜しくなってきた。
仕方がないので、大家さんの代わりにこのアパートの他の住人に託そうと考え、301号室のインターホンを押した。実は先程から話し声が聞こえていた。
中から年をとった男性が出てきた。
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