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悲鳴を聞いた私は、
「大丈夫ですか?」
と部屋の中を覗き込んだ。さっきのじいさんの部屋と同じ構造で、玄関側にキッチンがあり奥の方に2つ扉がある。右側の部屋の中にいるようだ。反応がなかったので靴を脱いで数歩、中へ入ったのだが、
「来ないで!」
奥の扉からおぼつかない足取りで出てきた痩せた彼女はこちらに気付くと驚いた様子で言った。
「――すいません」
私は心配したのだがおせっかいが過ぎたのかもしれない。知らない人の部屋に勝手に上がるような真似はつつしまないと。ましてや女性の部屋だ・・・。
私が部屋から外に出ると、さっきのスーツのおばさんが来ていた。おばさんも只事ならない雰囲気を感じたようで、私と入れ替わりで玄関に入った。
「河本さん、どうしたの?大丈夫?」
さっきはこの部屋は”橋本”という人の部屋と言っていたが今度は河本?
「彼が・・・、ヒロトが死んでるんです」
――スーツのおばさんが部屋の中に入っていき、状況を見て救急車と警察に電話をした。
その後、救急車が来るまでおばさんは部屋の中で女性と話したり私の所に来て話したりと落ち着かない様子だった。このおばさんは保険のセールスマンで、ここら辺の家を日頃から周っているからこのアパートの住人もだいたい知っているとのことだった。303号室は死んだ橋本さんとその恋人の河本さんが同棲していたそうだ。
それから遅刻すると会社に連絡し、夜勤明けで警備を交代するはずだった先輩社員にひどい罵声を浴びせらた。
――サイレンの音がして救急隊が到着。程なく警察も到着。救急隊は死亡を確認してやることがなくなったのかすぐに撤退していった。
「あんたも関係者?」
刑事の男が私のともにやってきた。
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