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「そりゃ別れたんだから喧嘩したりもしてたよ。それより、ヒロトは保険料を滞納していて、保険会社から何度も電話がかかって来てるって言ってたけど、それって岡部さんですよね?」
「仕事ですから連絡はしましたよ。でも別にそれで恨んでるとかそんなことはありませんよ。ただ、解約するとかちゃん対応していただければそれでいいのに、なんだか真面目に話も聞いていただけないので、どう対応しようかと。でも、恨むとかそういうことではないです」
刑事へ釈明すると今度は保険のおばさんから301号室のじいさんの方へ飛び火した。
「私なんかより林村さんの方がいろいろ文句言ってたじゃないですか。前にお会いしたとき、そうでしたよね?若いカップルが夜中もうるさいって。夜に眠れないって、ずいぶんストレスは溜まってるようでしたよ。」
「ふん。それよりもこの男の方が怪しいと思わないか?」
じいさんは私の方を指差した。それに続いて同居人の女性も言う。
「そうだ!この人、部屋の鍵持ってた。なんなの?」
「それは拾ったんですよ・・・」
保険のおばさんも疑いの目でじっとこちらを見ている。
「そうよ、鍵を拾ったっていうのも嘘なんじゃないの?だってなんで死体が鍵を落とすの。鍵を盗んで何食わぬ顔で301号室に来たんじゃない?」
すると、刑事がぽつりと言った。
「亡くなった橋本さんの遺体は窓際で首を吊っていたので、そのポケットから落ちたという可能性はあるが・・・、そう見せようとした?」
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