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文化祭当日
文化祭当日は朝から晴れた。クラスのモザイクアートもばっちりである。
各クラブともそれなりの出し物があり、写真部は写真を、書道部は筆の腕前をここぞとばかりに披露している。
体育館では吹奏楽部が午前に演奏、午後は軽音楽部がライブをやっていた。
昼も過ぎて、良介とぶらぶら回っていると、体育館からバンドの音が聞こえてきた。
「ちょっと見てく?」
良介がそういうので、
「あぁ」
と中に入った。
その途端……。
(ブッ!)
ステージの上で気持ち良さそうにバラードを熱唱しているのは、由依だった。
「何で、あいつがあそこにいるの!?」
二人して目が点になる。
(ほんと、何でもやる女だな)
バックのメンバーは全員男。
「あれは3年生だな」
と良介が言う。
(どこでどういう人間関係持ってんだか。ほんとに9月に転校してきたばっかりなのか?)
「じゃ、最後の曲です!」
会場はキャアキャア言ってる。
(何この盛り上がり!?)
アップテンポなイントロが始まった。最後の曲で盛り上げて…は、お決まりのパターンだが、始まる前からこれだけ盛り上がってれば文句ないだろう。
「なんか、どこかで聞いたことのある曲だな」
「これって、懐かしの90年代ソングじゃない?」
なかなか思い出せない。
「あっ、あれだ!」
良介が言う。
「森高、森高千里」
あぁ、YouTubeで見たことある。あのきれいな人。
「これが歌いたくて、あんなミニ履いてるのか」
「フリまでコピーしてる」
いよいよ曲はサビとなり、「私がおばさんになっても~」と気持ち良さそうに歌ってる。会場はなんだこりゃという盛り上がり。主に女子だが。
間奏に入ったところで、由依がおれたちに気づいた。
その時なんと、
「小早川クーン!」
と言って、こっちに手を振った。
一斉におれたちに注がれる視線。
(おいおい)
再びやってくるサビ、単純なリフレインに会場も熱唱。
良介がふと言った。
「こうして見ると、相川って森高千里に似てるかもな」
「う~ん…。顔と身長は似てるかも」
「そんだけ似てりゃ、十分だろ」
「髪の長さが違う」
YouTubeで見た森高は、ロングだった。おれはロングが好きだ。
曲は歓声の中で終了し、アンコールがかかっていたが、何やら居ずらくなって、外に出た。
良介が、
「やるなあ、あいつ」
とまた呟いた。
ほんとこのエネルギーにお手上げだ。
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