予想外の展開

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予想外の展開

 翌日。 「小早川(れい)くんと相川由依さん」  選挙の結果を先生が発表し、みんながご祝儀の拍手をくれた。良介たちがくすくす笑ってる。 「なんで、転校早々私があんたと学級委員なのよ」 「みんなに聞いてくれよ」  口もきかない学級委員の組み合わせ。  数日たったある日、先生に頼まれ仕方なく、放課後の教室で先生の用事を二人して手伝った。  仕事はあっさり終わり、先生は職員室に戻る。  教室に二人がぽつんと残された。  無言で荷物を片づける。   今日はクラブもない。あとは帰るだけの午後。 (さすがに「じゃあな」くらい言って帰るか…)  そう思ってると不意に、 「じゃあね」 の声とともに、ドアの開く音がした。 「あ、おい…」  慌てて声をかける。 「何? 何か用?」  そっけない返事。顔だけこっちに向けて聞き返してくる。 「いや、別にそうじゃないけど」 「そう。じゃ…」  にこりともせずに行こうとする。 「そうじゃなくて……」 と声をかけると、くるりと向き直る。 「何? どうしたいわけ?」 と全く笑みのない顔で返事を返す。  自分でも何がしたいのか、よくわからなくなってきた。 「いや…」 「何よ?」  いらいらしているのが伝わってくる。 「…おれも帰るよ」 「えっ…」  あの時何故あんな変なこと言ったんだろう。 「おれも帰るよ」って……、「帰れば」と冷たく言われてもおかしくなかったが、 「じゃぁ…、その辺まで一緒に帰る?」 とあいつは言った。  それもちょっと笑顔で。  予想外の展開は思考を組み替える。 (……)
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