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文化祭
9月の後半、文化祭があった。文化祭なんている? と思っていたが、あるものは仕方ない。
クラスの担任は、小林美紀先生と言った。年はおれたちより一回り上の元気な先生。
HRの時、小林先生が言った。
「文化祭の時の学年共通の出し物として、モザイクアートをクラスごとに作成することになったよね。それで、原画のアイディアを何枚かみんなに描いてもらったんだけど、投票の結果、相川さんの絵に決まりました」
「わぁ、すごい」的なざわつきでみんなが由依の方を見る。本人はちょっと照れくさそうな顔をしてる。
(へぇ。絵もいけるんだ)と思っていると、
「それに関わって、学級委員はこの後ちょっと残っててくれる?」
と先生は言った。
(またか…)
HR終了後、教卓の側に行くと先生が言った。
「はい。じゃ相川さんが描いてくれた原画、本人に返しとくね。このモザイクアートの作成、誰がどこを担当するか、もちろん班ごとくらいの分け方でいいので、二人で役割分担、決めてくれる?」
先生はそう言うと、「私ちょっとこれから会議なのでよろしく!」と言って職員室へ足早に戻って行った。
また、二人でお仕事か。前ほど絶望的に気まずくはないが、別に仲がいいわけでもない。
「……絵も上手いんだ」
ちょっと褒めてみる。
「まあね」
と今日は最初から笑顔か。
(案外わかりやすいタイプ?)
「どうやって分ける?」
と言いながら席に座ると、由依も向かいに腰掛けた。
「班が10あるから、こういう感じに分けて……」
と話し始める。
(髪がさらさらだな。これだったら長く伸ばしてもいい感じだろうな)
昔から長い髪の女の子が好きだった。好きな芸能人もみんなそう。
分けた前髪の間から眉毛が覗いてる。
(眉毛も凛々しいというか何と言うか、すっと切れてて…)
などと考えていると、
「~~みたいな感じでいいんじゃない?」
と急にこっちを向くので目が合った。
「うん? ちょっと、聞いてる?」
(やばい)
「聞いてる、聞いてる。…いいんじゃない、それで」
適当に誤魔化した。
ちょっと変な顔をしていたが、思い立ったように由依が言った。
「喉乾いたね」
「あぁ、自販機に行く?」
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