モテる女

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モテる女

 二人で自販機に飲み物を買いに行く。若干(かなり?)の違和感を覚えつつ。  1年生の女子が数人こっちを見ながら何やら喋ってる。 (あの視線の先にいるのは……、おれじゃないな。残念ながら)  由依はそこら辺りの男子よりイケメンの雰囲気が漂っている。それでこんなことになる。  自販機にコインを入れ、取り出した缶を開けながら聞いてみた。 「なんでさ、そんなに何でも出来んの?」  由依も缶を取り出しながら返事を返す。 「うちって厳しい家なのよ。小さい頃から習い事も沢山やらされてたし」 「でも、習いに行っても、出来ない人は出来ないだろ」 「うーん、そうね…。私、センスあるから」  そう笑ってプルトップを引き、太陽に顔を向けて缶コーラを飲む姿はなかなかさまになっていた。 (こりゃ女子にモテるわな)  人間、何か欠けてるところがあったり、コンプレックスがあったりして、そのコンプレックスをバネに、また頑張ろうとするものだと思うが、この子は出来すぎだ。  ……みたいなことを考えて見ていると、急に、 「何?」 とこっちを向いた。 (まずい) 「いや、何でもない」 「何か視線を感じたけど」 「違う、違う」 「もしかして……、気になるの? 私のことが」 「べ、別に~」 と強く否定する。 「いいよ、それならそれで」 と笑う。 「そんなわけないだろ」 と向こうを向いた。 「ふ~ん」  顔をじろじろ見られてる。  この変な空気を壊そうと思い、 「そろそろ戻ろうぜ」 と、缶を空き缶入れに放り込み、歩き出す。  暑い暑い。変な汗をかいた。 (観察してただけなんだが、気をつけないとな)   今度は何年生だかわかんない男子数名がこっちを見ていた。 (はぁ、男からも女からもモテること)
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