文化祭前夜

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文化祭前夜

 文化祭は10月第1週の土曜日だった。  その前日、放課後、クラブを終えて、すっかり暗くなった頃、帰ろうとすると門を出る直前に後ろから声をかけられた。 「小早川くん!」  振り返ると由依がいた。 「おっ…、何?」 「ちょっと教室が気になるんだけど、一緒に行ってくれない?」 「いいけど、なんか重いものでも運ぶの?」 「いや、そうじゃないんだけど……」  いつもはっきりものを言う人が口ごもっている。 「じゃぁ、まあ行こうか」 「ありがと」  うちの教室は敷地の奥にある校舎の3階だった。  お世辞にも新しいとは言えない校舎は、いつも思うが夜見ると不気味だ。  階段の照明スイッチを探して点ける。  珍しく口数の少ない由依に話しかけた。 「体調でも悪いの?」 「いや、そんなことない」  なんだかいつもと違うなと思いつつ、3階まで上って廊下を見ると、真っ暗だった。 「ねぇ、なんで学校って、夜はこんなに怖いのかな?」 「まぁ、確かに昼間と全然違うよな」  そんなことを話しつつ廊下の照明のスイッチを探す。 「普段自分で電気点けたりしないからな」 と、辺りを見回すが、よくわからない。 「自動点灯のわけないよな」 「絶対違うと思う」  すると、地味なところにスイッチを発見した。 「あ、あったあった。これじゃん」 と、スイッチを入れると、廊下の蛍光灯が一斉につき始めた。  が、次の瞬間、パチッという音とともに、奥の蛍光灯が2つ消えた。  おれたちの教室の前だけ。 「何、今の?」  二人でしばし固まった。  由依がおれの背中の後ろに隠れるように回った。
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