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願いのようにそう考えていたとき、僕に握手を求める人がいた。
精悍な顔をしたその人は、僕に微笑みかけ、こう言った。
「伴田聡です。明海からお噂は予予。僕と同じ名前で勝手に親近感を持っていました」
聡と聡。同じ漢字でささやかに読み方が違う。彼は白いタキシード姿。僕は余所行きのスーツ。二人の明暗を分けたものは、明海の母親の言葉だった。
『サトシくんて言うのね。明海のことをよろしく。仲良くしてやってね』
あのとき読み間違えていなければどうなっていたか。それはもはや神のみぞ知る話だ。
でも、明海が幸せになってくれたら、僕も多分、幸せだろうと思った。
(了)
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