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だいくんありがとう。
小さなお手手をそっと伸ばした。
「お、笑ってくれた」
だいくんの目から涙が溢れた。
「年長になってからりくはひまわり幼稚園に入ってきたんだ。冬に妹が産まれるんだ、そりゃあ嬉しそうだった。でも、夏休みが空けてからどんどん元気がなくなっていって、体のあちこちにアザを作ってくるようになった。もともと痩せていたのにさらにガリガリになっていって、笑わなくなって、しまいには幼稚園にあまり来なくなった。俺はりくの笑顔が見たくて幼稚園に来たときはわざと意地悪ばかりしていた。だから、りくにはいじめっこだと思われ嫌われていたと思う。年の離れた兄さんたちは真っ先に虐待を疑った。でも何も出来なかった。りくを救えなかった」
泣き崩れただいくんに、子どもたちが駆け寄った。
「パパは勇気のある正義のヒーローだって、おじさんたち言ってたよ」
「パパがお巡りさんを連れてこなければ、友だちは一生見付からなかったって。パパは今も昔も私たちのヒーローだよ」
「円加、南朋。ありがとう。パパ嬉しいよ」
手の甲でごしごしと涙を拭った。
「りく、あの日の約束を守ってくれてありがとう。会いに来てくれてありがとう。パパといっぱい遊ぼうな」
「りくくんはパパだけのものじゃないよ」
「そうだよ」
「ひとりじめきんし」
みんな代わり番こに抱っこしてくれた。
顔はとっても怖いけど優しい死神さんと、だいくんのお陰でようやく永い眠りにつける。
もうじきりくとしての記憶はなくなるけど、だいくん僕を見付けてくれてありがとう。
死神さん迎えに来てくれてありがとう。
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