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天国にはね、虹色にキラキラと輝くすべり台があるんだよ。
神さまのお迎えが来た赤ちゃんは、ママのおなかへと一直線に滑っていく。
数えきれないくらいたくさんのお友だちにバイバイした。たまに戻ってきちゃう子もいるけど。
ここにいると時間の感覚がなくなる。
「りく」
懐かしい声にどきっとして振り向くと、死神さんが笑顔で立っていた。
昔のまんま。なに一つ変わってない。
「しにがみさん、ぼくのことわすれちゃったのかなっておもってた」
「りくのことも男の約束も忘れる訳ないだろ。ほら迎えに来てやったぜ」
あのとき見たく真っ白な手を差し出された。
おっかなびっくりその手を受け取ると、すべり台のてっぺんまで連れていってくれた。
「パパは車の整備士。ママはコンビニエンスストアで働いている。お姉ちゃんが三人いる」
「おにいちゃんじゃないから、ちーくんやるーちゃんみたくママとパパにかわいがってもらえる?いらいっていわれない?じゃまだっていわれない?」
「あぁ。今度は大丈夫だ。俺が保証する。お世話大好き、面倒みのいいお姉ちゃんたちが三人、もれなくついてくるぞ」
「やった!」
嬉しくてピョンピョン飛び跳ねたら、死神さんに危ないよって注意されちゃった。
「しにがみさん、ありがとう」
「今度こそ幸せになれ」
「うん」
涙がボロボロと溢れてきて。止まらなくなってしまった。
死神さんがいつお迎えに来てくれるか楽しみだったのに。今はただ悲しくて仕方がなかった。
「しにがみさん、じいちゃんとばあちゃん、おねがいしてもいい?りくのために、ずっとほかのあかちゃんにすべりだいのじゅんばん、ゆずってきたんだ」
「任せておけ。新しい家族のもとにふたりをちゃんと送り届けるから」
じいちゃんとばあちゃんが笑顔で手を振ってくれた。
バイバイじゃない。
いつかまた会える。だから僕は大きな声で行ってきます。そう言ったんだ。
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