3回目の自殺

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3回目の自殺

  死ぬなら勝手に死んでくれ。ただし、確実に死んでくれ。 さすがに三度目の自殺未遂となると、そう思いたくもなる。 しかし、白いベッドに横たわる(たき)さんは、小気味よい寝息を立て、しっかりと生きている。 何日か風呂に入っていないであろうゴワゴワと伸びきった髪の毛、まばらに生えた不精ひげ。どこまでも(たる)みきっているスウェットは、きっと洗濯など一度もしていない。絶対していない。 なぜ、あたしはこんな自殺未遂男の面倒を見なければならないのだろうか。しかも、今日で三回目だ。 腹立つ腹立つ。腹立つ! そんなに死にたいのであれば、いっそ殺して楽にしてやろうかとも思うが、二十一歳の女子大生という平凡な肩書きに、殺人犯を添えるつもりはない。大家の肩書だけで充分最悪だ。 それに、我がメゾン・ベルバラに「事故物件」のレッテルを貼られたらシャレにならない。ただでさえ、築三十年以上のボロアパート。大家は、あたしのようなしがない大学生。誰もかれもが見放した、侘しい物件なのだから。
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