0人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日の試験は散々だった。安眠の最中にペンが握れないのは当然である。
「復讐決意して、復習できず……。我ながらダサい!」
「うわぁ。なんか知らないけど寒いこと言ってる……。そんなダメだったの? 栄養生理学」
食堂で肩を落とすあたしの向かいの席に座った舞子が、冷たい目でこちらを見ている。
「聞いてくださいよ、舞子さん。不幸なあたしの身の上話を」
「ええ、陽葵さん。絶対に聞いてあげませんよ」
不敵な笑みもチャーミングな舞子は、女子大生を正しく謳歌している。
試験もバイトも及第点までの努力でそつなくこなして、後は社会人の彼氏と良い感じに楽しく過ごす。成績も悪くないから、国家試験もきっと軽くパスする。そうしたら管理栄養士で安泰。良い感じに結婚して、明るい家庭を築き、キラキラした人生を過ごすのだろう。
「舞子は、ずるい」
「陽葵が悪いの。試験勉強しなかったんでしょう?」
「そうじゃなくて、舞子の人生考えたら幸せすぎて、腹立ってきた」
「んもう。勝手に他人(ひと)の人生想像して僻まないで」
どうせみんな管理栄養士じゃん、とこぼして、ネイルのチェックを始めた。
「無限自殺未遂男にかまってたら、国家試験も落としかねないよ……」
「わわわ! 例の? また?」
最初のコメントを投稿しよう!