第二十章 崩れた日常

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「亜希くんが、啓さん最近忙しい、って言ってたから」  利実は啓のスマホではなく、勤め先の病院へ電話した。  午後からは手術の入っている、啓だ。  急いで軽い昼食を摂っている時に、外線が回ってきた。 「もしもし」 『菱先生。王子さま、とおっしゃる方から、お電話ですが。取れますか?』 「繋いでください」  啓は、利実の父の顔を思い浮かべていた。  利実との婚約を解消して久しいが、まだ何かあるのだろうか?  そう考えながら、通話を繋いだ。 「菱です」 『啓さん。この、やぶ医者!』 「……利実くんか?」 『亜希くんの体調変化に、気づいてないの?』  利実は啓の監督不行き届きをたっぷりと罵りたかったが、そこはぐっと我慢した。
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