第二十五章 そして未来へ

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第二十五章 そして未来へ

 啓は、世間の注目のただなかにいた。  若き、天才外科医。  眉目秀麗にして、エリートのアルファ男性。  その啓が、iPS細胞から作製した心筋細胞シートの移植手術に成功した。  治験自体はすでに複数の報告があるが、今回は世界初のオメガ男性に対してだ。  10代という亜希の若さも、幼くして難病に苦しむ患者たちへの明るいニュースだった。  亜希のプロフィールは、プライバシー保護のためにこれ以上明かされていない。  ただ、経過は順調、とだけ報道された。 「以前の私なら、のぼせ上って得意満面になっていただろうな」  そう、啓は振り返る。  亜希の術後の容体が安定してから開かれた、記者会見。  そこで啓は、ただただ自分を支えてくれた人々に感謝した。  この治療法が出来上がるまでの、膨大な量の基礎研究に携わった人々。  心筋細胞シートを作ってくれた、技術者たち。  経験不足の自分に助言や指導をしてくれた、医師たち。  そして何より。 『僕は、啓さんを信じています』  命を預けて、手術を受けてくれた、亜希。 「私はこういった多くの方々に、心より感謝しています」  そう言って、会見を締めくくった。
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