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啓の運転する車に乗り、亜希は素朴な疑問を投げかけた。
「どうして、会って間もない僕に、こんなに良くしてくれるんですか?」
「うん。そうだな……」
啓は、すぐには答えなかった。
彼自身にも、解らなかったのだ。
「なぜだろう。ただ……」
「ただ?」
「初対面の時、君のことを愛らしい、と感じた」
亜希は、その答えに頬を染めた。
そして、黙ってしまった。
(胸が、ドキドキする)
これまで客に、可愛いと言ってもらったことは何度でもある。
言われ慣れてきた言葉のはずだ。
(だのに、こんなに緊張する)
身を固くする亜希に、今度は啓が質問をした。
「亜希くんは……、か?」
「え? あ、ごめんなさい! も、もう一度お願いします!」
「亜希くんは、アイスクリームは好きか?」
「え!?」
思わず亜希は、ナビシートから啓の顔をうかがった。
口の端が、緩んでいる。
優しい笑顔だ。
「は、はい。好きです、アイスクリーム……」
「では、お薬を飲んだ後に、食べに行こう」
「はい!」
二人を乗せた自動車は、軽快に走り続けた。
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