第三章 アイスクリームは好きか?

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 啓の運転する車に乗り、亜希は素朴な疑問を投げかけた。 「どうして、会って間もない僕に、こんなに良くしてくれるんですか?」 「うん。そうだな……」  啓は、すぐには答えなかった。  彼自身にも、解らなかったのだ。 「なぜだろう。ただ……」 「ただ?」 「初対面の時、君のことを愛らしい、と感じた」  亜希は、その答えに頬を染めた。  そして、黙ってしまった。 (胸が、ドキドキする)  これまで客に、可愛いと言ってもらったことは何度でもある。  言われ慣れてきた言葉のはずだ。 (だのに、こんなに緊張する)  身を固くする亜希に、今度は啓が質問をした。 「亜希くんは……、か?」 「え? あ、ごめんなさい! も、もう一度お願いします!」 「亜希くんは、アイスクリームは好きか?」 「え!?」  思わず亜希は、ナビシートから啓の顔をうかがった。  口の端が、緩んでいる。  優しい笑顔だ。 「は、はい。好きです、アイスクリーム……」 「では、お薬を飲んだ後に、食べに行こう」 「はい!」  二人を乗せた自動車は、軽快に走り続けた。
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