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二日後。
啓は、やはり自分の誕生日には帰宅しなかった。
それでも亜希は、精いっぱいのお祝いの準備をして待っていた。
テーブルには、花を。
とっておきの、食器を。
そして、良い肉を大切にフリッジに収めて待っていた。
彼が帰って来てから、ステーキを焼くつもりでいた。
勉強の合間に、亜希は気分転換に料理をするようになっていたのだ。
肉の焼き方も、ずいぶん上達した。
今日の、このハレの日に、腕前を発揮しようと待っていた。
待って、待って、待って。
待ちくたびれて、ソファでうたた寝をしていると、ふわりと空気が動く気配がした。
「……啓さん?」
姿勢を整えたが、そこに啓はいない。
代わりに立っていたのは、あの婚約者・利実だった。
「殊勝だね。帰ってこない人のために、誕生祝いの準備をしてるなんて」
「利実さん」
すいと滑るように動き、利実は亜希の隣に掛けた。
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