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「ただいま」
「啓さん!?」
利実が去って間もなく、啓の声がした。
今夜は、帰らないはずなのに。
「少しだけ、他の先生にお願いして、代わってもらった」
「いいんですか?」
「亜希が、私の誕生日にどんなサプライズを用意しているかが、気になってね」
「啓さん……」
亜希の胸は、弾んだ。
解ってくれてたんだ、啓さん!
「ステーキを、焼きます。掛けてください」
「それは楽しみだ」
「あの。その前に」
「ぅん?」
「お誕生日、おめでとうございます」
「ありがとう。いい誕生日だ」
啓は、亜希をそっと抱き寄せ、軽く唇を合わせた。
利実の残した意地悪な言葉が、見る間に溶けて無くなっていく。
二人きりの、誕生会。
だがそれは、とても素敵な時間だった。
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