第九章 悪戯

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「大丈夫。むしろ、形跡を残すことが目的だから」 「どういう意味?」 「ちょっと、困らせたくなってね」  利実は、そこで亜希の姿を思い描いた。  生意気な、啓の愛人。 (身の程を、わきまえなさい。っての!)  予備校が終わるのは夕刻なので、啓より先に亜希が帰宅する。  その後に帰った啓が、夜に乱れたベッドを見れば、亜希が男を連れ込んだと思うだろう。  利実は、二人の間に波風を立てるつもりだった。  啓に問い詰められる亜希を想像するだけで、笑みが漏れてくる。 「さ、来て」 「じゃあ、遠慮なく」  背徳感からくる興奮に押されて、慎也もベッドに上がった。  キスをし、慌ただしく衣服を脱ぎ、横たわった。 「利実、綺麗だよ」 「うん、知ってる」  セックスの合間に挟まれる慎也の言葉も、利実は心地よく聞いていた。  自分を賛美する言葉に、酔っていた。
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