第十章 怒り

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「僕。僕……!」 「何か知っているなら、正直に話して欲しい」 「ごめんなさい。僕、本当に何も知らないんです!」  亜希の瞳から、涙がこぼれた。  清い、涙だ。 「僕、もう啓さん以外の人に抱かれたくないんです。信じてください。信じて……」 「もういい。悪かったな」  啓は亜希の言葉に、どれほど彼が自分を信じ、慕ってくれているかを知った。  どれほど、その情が深いかを、知らされた。 「少しでも疑った自分が、恥ずかしいよ」  だが、とも言った。 「いずれ、君も独り立ちする。誰か素敵な人を愛する、心の柔らかさを持つんだ」 「……はい」  はい、と口で返事をしながら、亜希は心の中では否定していた。 (啓さんより好きになる人なんて、いない)  一生、独身でいい。  啓さんと、たとえ離れても。  彼が、たとえ利実さんと結婚しても。 (僕はずっと、啓さん一人を愛し続けます)  その啓は、ベッドを調べている。  やがてうなずくと、スマホを手にした。
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