第十章 怒り

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 啓の傍には、亜希がいる。  彼に、啓は何度も詫びた。 「本当に、すまなかった。君には、不快な思いをさせてしまった」 「いいえ。もう、いいんです」  お食事にしましょう、と亜希は啓を促した。 「私は、ベッドメイキングをしてから、行くよ」 「僕がやります」 「そこまで、君にさせるわけにはいかない」  自分を戒めるためにも、啓は動いた。  シーツを替え、ピローカバーを替え。  ダストボックスのスキンは、使い捨ての手袋をしてから、紙に包んだ。 「趣味の悪い、悪戯を」  利実は亜希を陥れるためだけに、こんなことをしたのではない。  他の男と寝るような真似を見せつけて、私に嫌がらせをしたのだ。  利実の後始末をしながら、啓はそんな風に考えていた。
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