第十二章 啓の提案

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 待ち合わせは、コンサートホール前の広場。  時計塔の傍に、啓は立っていた。  今日は、ノー残業でクリニックを出た啓だ。 『菱先生が定刻で帰るなんて、珍しい』 『何か、あったんですか?』 『今から、あるんですよね。私が思うに、デートとか!』  医療スタッフに、いいように言われてしまった。 「デート、か」  我知らず、頬が緩んだ。  私が、亜希とデート。 (なぜだろう。心が弾むな)  まるで、初恋を再び味わっているかのようだ。  初めて会ったその時は、身も心もボロボロで、庇護せずにはいられなかった亜希。  だが、最近の彼は違う。  輝いて、見える。  眩しく、映る。  その魅力は、どんどん増していく一方だ。  想いにふける啓の耳に、朗らかな声が響いた。 「啓さん、お待たせしました!」  亜希が、到着したのだ。
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