第十二章 啓の提案

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「亜希……」 「ごめんなさい。待ちましたか?」 「いや、別に……」 「どうかしましたか?」  啓は、亜希から目を離せなくなっていた。  髪を整え、ドレスアップし、精いっぱい背伸びしている亜希。  そんな彼が無性に愛しく、心に飛び込んできた。 「がんばって、お洒落してきたんだな」 「解ってくれますか!?」 「良いよ。とても似合う」 「ありがとうございます!」  その笑顔も、啓の目には眩しく映る。  黄昏時に、周囲は暗くなっている。  そんな中、降り注ぐ光のように、亜希は存在している。  思わず啓は、片腕を彼に差し出していた。 「では、行こうか」 「はい」  亜希は、啓の腕に手を軽く乗せた。  大切に、腕を組んだ。  二つの影は一つに重なり、華やかな夜の幕開けになった。
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