第十三章 初デート

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 メニューを開いた亜希は、驚いた。  どれもが、法外に高いのだ。 『時価』とだけあって、値段が解らないものまである。  目を白黒させる亜希からメニューを取り上げ、啓は松前に声を掛けた。 「お任せで。あと、こちらには茶碗蒸しを付けて」 「啓さん」 「亜希。金額は、気にしないでいいから。ここの寿司は、街で一番おいしい。それだけは、保証する」  その言葉に、松前は張り切った。 「大サービス、しときますよ!」 「ありがとう」  老舗に受け継がれてきた伝統の味から、現代に併せた創作寿司まで、大将は持てる腕前を存分に振るった。 「すごく、おいしいです!」  喜ぶ亜希の歓声に、松前も笑顔だ。 「嬉しいですねぇ。こうやってお客さんが、美味しいおいしい、って言ってくれるのを聞くのは」  そんな松前の腕前に、啓の顔もほころぶ。 「患者だった人が元気に振舞う姿を見るのも、医者冥利に尽きるよ」  寿司を頬張る亜希の横顔を見ながら、啓は少しゆっくりと瞬きをした。 (亜希は、周りを笑顔にする不思議な力を持っているな)  あの気難しい大将まで、笑っている。  寿司は、いつもの数倍おいしい気がしていた。
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