第十六章 光る涙

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「亜希!」  啓の手首を、亜希が握っている。  そして、ゆっくり首を振った。 「利実さんは、僕を助けてくれたんです。啓さん、怒らないで……」 「亜希、大丈夫なのか?」 「僕は、あの人たちに汚されていません。利実さんが、守ってくれたから……」  うんうん、とうなずき、啓は亜希の手を握りしめた。  髪を撫で、頬に触れた。 「啓さん……、やっぱり来てくれた……」 「遅くなって、すまなかったな」  そんな二人が、利実には尊く見えた。  心を通わせ合い、一つに寄り添う姿。  多分、今見ているこの二人こそ、愛の成す輝きなのだろう。  音を立てないように、利実はそっとその場から離れた。  リビングに歩き、バッグからカードを取り出した。 「啓さん。マンションのキー、返すね」  テーブルの上に、見えるようにカードキーを置くと、利実は部屋から出た。  もう二度と、啓や亜希の許しがなければ、ここには来ない。  そう決めて、エレベーターに乗った。 「あれ……。何でだろ、涙が……」  涙が、止まらない。 「ごめんなさい、啓さん。そして、さよなら」  失ったものの大きさに震え、涙した。
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