第十七章 贈る言葉

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 自由奔放で、浮気性。  未遂に済んで良かったが、亜希を危険にさらした、利実。  だが彼は、いずれ私のパートナーになることに、同意していなかったか?  菱家と王子家が組めば、その地位も財力も盤石だ。 (私たちの思いは、同じだと感じていたが……)  家同士が決めた、政略結婚。  それを、甘んじて受け入れていたのは、啓も利実も同じだったはずだ。  考え込む啓に、王子は身を乗り出した。 「なぜ利実がこんなことを言い出したのか。菱先生に、お心当たりはありませんか?」 「王子先生に、利実くんは何と?」 「何やら、自分は菱先生にふさわしくないから、とか言っております」  いつも高慢で、自信にあふれた利実らしくない言いようだ。  啓は、リビングのテーブルに置き去られていた、マンションのカードキーを思い出していた。  あのキーを置いた時から、利実の心は決まっていたのかもしれない。 「利実くんがそう言うのでしたら、わたくしも同意します」 「菱先生!?」  王子は、慌てた。  てっきり啓が、利実を説得して結婚にこぎつけてくれる、と思っていたのだ。 「利実くんは、一度言い出したら曲げない性格ですから」 「そ、それはそうですが……」 「婚約は一度、白紙に戻しましょう」  王子はその後もいろいろと言っていたが、結局は諦めて帰って行った。
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